リン酸鉄系と三元系のポータブル電源の違いを解説

この記事で分かること
  • リン酸鉄系と三元系のポータブル電源の違い

ポータブル電源で最近よく聞くのが「リン酸鉄系」という単語。

リン酸鉄という単語は聞きなじみがないと思うので、この記事では電池のプロがリン酸鉄系のポータブル電源について解説します。

また「リン酸鉄系」と対をなす「三元系」と呼ばれるポータブル電源との違いも解説していきます。

この記事を書いた人

テイクです。電池の専門家です!

  • 国立大学で最先端太陽電池の研究
  • 企業でリチウムイオン電池の開発

に携わっていました。

電池のことを熟知しているからこそ、ポータブル電源の特性をどこよりも詳しく解説することを心がけています。

目次

結論:リン酸鉄系は最新の優れたポータブル電源

ポータブル電源の種類特徴
リン酸鉄系
(LFP)
・10年以上の長寿命
・安全性が高い
・今のポータブル電源の主流
三元系・寿命は数年程度
・リン酸鉄系と比べると安全性が低い
・数年前のポータブル電源の主流

結論から言うと、リン酸鉄系は最新の優れたポータブル電源です。

ポータブル電源は大きく分けて「リン酸鉄系」と「三元系」に分けられます。

以下にリン酸鉄系と三元系のポータブル電源の特性をまとめていますが、「製品寿命や安全性といった点でリン酸鉄系の方が三元系よりも優れています」

ポータブル電源に使われるリチウムイオン電池は技術革新がすさまじく、リン酸鉄系(LFP)という従来の三元系のほとんど上位互換のものが台頭してきました。

そのため今からポータブル電源を購入するのならリン酸鉄系を選ぶことを強く推奨します。

リン酸鉄系を最新のiPhone16とすると、三元系はiPhone8くらい違います。

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そもそもリン酸鉄系と三元系とは

そもそもリン酸鉄系と三元系って何のこと?

という人が多いと思うので、「リン酸鉄系」と「三元系」の言葉の意味を解説します。

ポータブル電源の中にはリチウムイオン電池が入っており、リン酸鉄系と三元系は「中に入っているリチウムイオン電池の材料の名称」です。

リン酸鉄系(LFP)

リン酸鉄系のリチウムイオン電池はLFPとも呼ばれています。

LFPLiFePO4という材料の化学式の頭文字をとった略称です。

リン酸鉄系は三元系で使われるコバルトやニッケルといった希少な金属(レアメタル)を使わないため、材料コストを抑えられるというメリットがあります。

さらにサイクル寿命や安全性といった電池性能の点でも三元系よりも優れていると言われています。

一方で三元系と比べてエネルギー密度が低く、電気自動車(EV)の限られたスペースに搭載する場合には不利とされてきました。

ただしLFPの技術進化はすさまじく、エネルギー密度が低いデメリットも改善しつつあります。

最近では電気自動車(EV)にもLFPが使われ始めていますね。

三元系(NCM)

三元系のリチウムイオン電池はNCMとも呼ばれています。

三元系は材料であるニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)の頭文字をとった名称です。

三元系はコバルトやニッケルといったレアメタルを材料としているため、材料コストが高いというデメリットと埋蔵場所が偏在していることによる地政学的リスクを潜在的に抱えています。

エネルギー密度が高いことが最大のメリットで電気自動車などの使用に向いています。

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リン酸鉄系と三元系の歴史

リチウムイオン電池は現代でなくてはならないものですが、歴史は数十年程度と比較的浅いです。

ここではリン酸鉄系と三元系の歴史について解説します。

最初期のコバルト系を進化させたのが三元系

リチウムイオン電池はノーベル化学賞も受賞した吉野彰さんが1983年に原型を完成させています。

その最初期のリチウムイオン電池に使われていた材料がコバルト系材料(LCO)でした。

このコバルト系材料にニッケルとマンガンを組み合わせることで容量をアップさせたものが三元系(NCM)というわけです。

2000年ごろには日本とアメリカで三元系のリチウムイオン電池が開発されており20年以上の歴史があります。

ポータブル電源が徐々に普及し始めた2010年代には、ほとんどのポータブル電源に三元系リチウムイオン電池が搭載されていました。

リン酸鉄系は比較的新しい

リン酸鉄系の材料は90年代後半に発見され、2009年にソニーが初めて商品化した比較的新しいリチウムイオン電池です。

LFPは中国メーカーの勢いがすさまじくCATLやBYDといった電池メーカーが積極的に開発しています。

2022年あたりからポータブル電源にもリン酸鉄系のリチウムイオン電池が採用されるようになってきました。

参考:ソニー公式ホームページ

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リン酸鉄系と三元系のポータブル電源における特性の違い

リン酸鉄系と三元系の特性の違いは以下の通りです。

リン酸鉄系三元系
サイクル寿命(80%以上)
2000回-3000回500回-1000回
入出力特性
高い普通
安全性
かなり高い高い
耐久温度範囲
広い普通
エネルギー密度
小さい大きい
価格
比較的高い比較的安い
リン酸鉄系と三元系の特性の違い

サイクル寿命(80%以上)

リン酸鉄系三元系
2000回-3000回500回-1000回
サイクル寿命(80%以上)

サイクル寿命が長いほど充放電を繰り返せる回数が多いです。

サイクル寿命は初期の容量を100%としたときに、80%まで劣化する充放電回数を目安にすることが多いです。リン酸鉄系であれば2000回-3000回、三元系であれば500回-1000回が目安。

リン酸鉄系のサイクル寿命は三元系と比べて単純計算で2倍以上長いです。

入出力特性

リン酸鉄系三元系
高い普通
入出力特性

入出力特性が高いほどポータブル電源を急速充電できたり、消費電力の大きい電化製品を動かせたりできます。

リン酸鉄系は三元系よりも入出力特性に優れており、ポータブル電源として優秀です。

安全性

リン酸鉄系三元系
かなり高い高い
安全性

安全性は高ければ高いほどいいです。

一般的にリン酸鉄系の方が三元系よりも安全だと言われています。

その理由は高温の耐久性です。

リン酸鉄系は600℃近くまで高温の耐久性がある一方、三元系は220℃程度です。

通常使用する分には200℃に達することはまずないはずなのでどちらも安全ではありますが、万が一があったときの安全性という点ではリン酸鉄系の方が上です。

リチウムイオン電池は誤った使い方をすると危険。正しい知識のもと適切な使用範囲で使うことを心がけてください。

耐久温度範囲

リン酸鉄系三元系
広い普通
耐久温度範囲

リン酸鉄系は600℃近くまで高温の耐久性がある一方、三元系は220℃程度です。

低温側に関しても、リン酸鉄系は-20℃、三元系は-10℃まで正常に動作すると言われています。

エネルギー密度

リン酸鉄系三元系
小さい大きい
エネルギー密度

エネルギー密度が大きいほど、サイズもしくは重さあたりの容量が大きいということです。

例えば、「500Whのポータブル電源を作ろう!」と思ったときに、リン酸鉄系で作るよりも三元系で作る方がより小さく、より軽く作ることができます。

価格

リン酸鉄系三元系
比較的高い比較的安い

価格はリン酸鉄系の方が三元系よりも高いことが多いです。

材料のコスト自体はリン酸鉄系の方が三元系よりも安いものの、ポータブル電源の価格としてはリン酸鉄系の方が三元系より高めです。

数年したらリン酸鉄系のポータブル電源も価格が落ち着いてくるとは思うのですが、現状はリン酸鉄系が高いです。

あくまで概算ですが、500Wh/50000円の三元系ポータブル電源があったときに、同じ容量のリン酸鉄系ポータブル電源は500Wh/55000円くらいになるイメージ。

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リン酸鉄系が圧倒的におすすめ

三元系よりもリン酸鉄系のポータブル電源が圧倒的におすすめです。

サイクル寿命、入出力特性、安全性というポータブル電源で超重要な項目が優れています。

リン酸鉄系はエネルギー密度が三元系より若干低下するというデメリットはあるものの、そのデメリットを余裕で打ち消すくらいメリットが大きいです。

価格に関しても、買う瞬間はリン酸鉄系の方が三元系より高いですが、リン酸鉄系はサイクル寿命が2倍以上あるので長い目で見るとリン酸鉄系の方がコストパフォーマンスに優れています。

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リン酸鉄系と三元系を見分けるポイント

ポータブル電源の外観だけではリン酸鉄系か三元系か判別することは不可能です。

ですがリン酸鉄系は各メーカーがアピールしたいポイントなので、たいていの場合は商品ページの目立つところに「リン酸鉄」の記載があるはずです。

例えば以下のように。

スクロールできます

逆に言うと「リン酸鉄」の記載がないのであれば、リン酸鉄ではなく三元系の可能性が高いです。

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まとめ

この記事ではリン酸鉄系と三元系のポータブル電源の違いを解説しました。

結論から言うと、リン酸鉄系は最新の優れたポータブル電源です。

ポータブル電源の種類特徴
リン酸鉄系
(LFP)
・10年以上の長寿命
・安全性が高い
・今のポータブル電源の主流
三元系・寿命は数年程度
・リン酸鉄系と比べると安全性が低い
・数年前のポータブル電源の主流
再掲

リン酸鉄系はサイクル寿命、入出力特性、安全性というポータブル電源で超重要な項目が優れており。今からポータブル電源を購入するのならリン酸鉄系を選ぶことを強く推奨します。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

ポータブル電源選びで失敗したくない人は当サイトの「後悔しないポータブル電源の選び方とおすすめメーカー」を必ず参考にしてください!

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